スペタコペタ

2020/01/01 15:00



地元のつくり手と一緒にものづくりしたい!と思い立ち、それからややしばらくの逡巡と試行錯誤をしながらつくったのが「オホーツクスプーン」です。木地はクラフト工房KOCHIの石川さん、漆塗りは野つけうるしの菅原さんが担当してくれています。

石川さんは、カトラリーが得意な木工職人さんです。おおまかなところまでは「型」を使ってかたちづくるのですが、最後は手の感覚によって仕上げていきます。よく見ると、同じ製品でもひとつひとつが微妙に異なる表情をしています。それが手仕事から「人間」を感じるところであり、好きなところです。「オホーツクスプーン」では口当たりをよくするために、口に入る部分(「池」といいます)を薄くしています。そのような加工に耐えられる硬く丈夫な素材として、「カバ」の木を使っています。

漆塗りはオホーツク地域ではまだあまり馴染みのないものですが、「北限の塗師」を名乗る菅原さんは、オホーツクに漆文化を根付かせようと尽力する若き職人さんです。「網走漆」の存在は、菅原さんを通して知りました。日本産の漆という時点で今やとても希少なものとなっているようなのですが、その中でも特に希少なのがオホーツク・網走産の漆です。江戸時代に会津藩が植樹したといわれている網走漆は、現在は有志の保存グループ「網走うるしの会」の方々が手入れをしています。漆掻き(漆の樹液採取)も、会員でおこなっているそうです。採取できる量が少ないため、網走漆は値が張ります。それでも、地元の素材を使うことをまずやってみたくて、オホーツクスプーンの「上塗り」部分(直接口に触れる部分)に網走漆を使うことにしました。「上塗り」の前におこなう「中塗り」や、「拭き漆」(持ち手の先の部分)は、価格を抑えるために中国産漆を使っています。漆塗りは、漆の「乾燥」を待ちながらいくつもの工程を経る必要があり、ひとつ塗り上げるのにひと月以上かかります。

ひとまずかたちとなったオホーツクスプーンは、受注生産というかたちでオンラインショップに掲載しました。誰かの日々の生活を助けるものになったらいいなあと思います。

鈴木